なぎさのSMロック道 脳内麻薬
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    脳内麻薬

    遥か昔 私がまだ高校生のころ 桃子ちゃんっていうお友達がいました。
    桃子ちゃんは子供のころから糖尿病を持っていて
    いつも甘い缶コーヒーを飲んでいました。


    桃子ちゃんは、先生から見るといわゆる不良少女で、先生の顔を見ると
    細く整えた眉をいつもしかめて、睨みつけていました。


    色が真っ白で、ぽってりと丸く、いつも半開きの小造りなくちびるに
    右目の下の泣きぼくろと、大きくてまつ毛が長く、少したれ気味の目元に、
    巻き毛の栗色の髪は なんだかマリリン・モンローを彷彿とさせるのに
    くっきりとした眉をシュッと細く斜めに整えて
    それがなんだかアンバランスで可愛かった


    めったに学校に来ない桃子ちゃんはあまり口をきかず
    いつもつまらなそうに外ばかり眺めていました。




    ある日  「タカベ 家に遊びにおいでよ」って なんだか寂しそうに言うので
    「うん」と頷き、お家に遊びに行きました。


    桃子ちゃんのお家は公団住宅の2階でしたが
    桃子ちゃんの部屋はなぜかその上の階 3階のお部屋に一人で寝起きしてるらしく
    ずーっと敷きっぱなしらしい布団と塗装が剥げて何故かデコボコになった
    ボロボロの冷蔵庫と電子レンジが一つ


    薄暗くてテレビも無く、桃子ちゃんの夏の制服と数着の洋服が鴨居に架かっていて
    かばんが投げ出されている他は、ゴミだらけで
    昼間だというのにあちこちにゴキブリが我が物顔でカサカサ這いまわっている
    空き缶だらけのお部屋でした。


    「桃子ちゃん ゴキブリがいるよ 殺虫剤無いの?」
    と聞くと、「ゴキブリは何にもしないよ」
    とニコニコしながら言いました。


    「ここに友達連れてきたのタカベが初めてなんだ」
    と照れくさそうに言うので、若干引き攣りながらも「そう?嬉しいな」と答えました。


    内心ゴキブリにびくびくしながら、早く帰りたいと思いつつ平静を装っていると
    なにやら茶色のビンを持ってきて、ビニール袋にティッシュを数枚落とし
    ビンの液体をジョボジョボ入れて私にくれました。


    当時なんも知らない私はどうしていいのか解らず、ボーっと袋を持たされたまんま
    眺めていると、桃子ちゃんはクスクス笑いながら、こうするんだよ
    と すぼめた袋の口に鼻と口を付けると
    ビニール袋の中の空気を吸ったり吐いたりしていました。 


    真似して袋に口を付け、中の空気を肺いっぱいに吸い込んだ途端
    頭を何かでガ――――――ンと殴られたような衝撃の直後に
    顔じゅうの産毛がそそけ立つような感覚と、まるで水の中にいるような耳鳴りと
    スローモーションの世界に身体ごと落ちて行くような浮遊感と
    ドロドロと床に溶けて行くような脱力感に襲われました。


    回らない頭で桃子ちゃんを見ると、とろんとした目つきで壁にもたれ
    一心に袋の中身を吸ったり吐いたりしています。


    いったいどれくらいそうしていたのか、いつの間にかすっかり日が暮れて
    ぼんやりと街灯がともり、時計も無く 寒い桃子ちゃんの部屋で
    今が何時なのかも解らずに、薄汚れた一つきりの布団に二人でくるまり
    私の胸に顔を擦り付け、ぽろぽろと涙をこぼし 
    「いつも一人で眠るの このまま死んじゃうんじゃないかと いつも思うの」
    と泣きじゃくる桃子ちゃんを胸に抱き



    私は生れてはじめて 女の子をいとおしいと思いました。





    あれは まだ 半分子供同士の つたない愛なのか それとも単なる同情なのか
    その時の私たちには 知る由もなかったけど 
    お互いの淋しさと悲しみが 抱き合って溶けていくのが 心地よくて
    ふたり 朝まで抱き合って 寄り添って 眠りました


    その後 桃子ちゃんは 全く学校に来なくなり
    心配になった私は 桃子ちゃんちに行ってみましたが
    そこはもう誰もいない空き部屋になっていました。



    それから10日ほどたったある日

    朝のホームルームで 先生が桃子ちゃんが学校を中退した と話し
    それきり彼女とは会えなくなってしまいました。







    あの時のことを 思い出すと 今でも 

    あの不思議な感覚に包まれるような気がします

    私の脳が あの時のことを覚えていて 再現しようとしているのか

    それとも 桃子ちゃんを 思う心が そうさせるのか

    ときどき ふと あの頃に戻って 甘美で切ない 眩暈に襲われるのです。













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    コメント

    非公開コメント

    No title

    …なんとなく、だけどそのコの気持ち、わかる。や、わかるなんていったら失礼だね。
    ひとり、でなく孤独。だったんだ。お友だちの作り方すら忘れてしまったんじゃナイかな。
    ひとりでは生きていけないのにひとり。だから。
    …かなしいね。

    Re: No title

    コメントどうもありがとう

       孤独   漢字で見るとなんだか怖いぐらい悲しい単語です

    親にも先生にも突き放された孤独な女の子だったよ
    さびしいから余計に人を寄せ付けないみたいに見えた

    お家の都合なのか、急に黙って引っ越してしまったそうで
    二度と会えなくなってしまったけど、時々 今でも街で似た子を見かけると
    声をかけたい衝動が抑えられない

    No title

    わたしは祈るよ。その人がいま孤独でないことを。 異性でもいい同性でもいい 彼女さんの孤独を、渇きを癒してくれているヒトがいることを。

    Re: No title

    私のお友達のために祈ってくれてありがとう
    人の痛みをいやというほど知ってるからゆうさんはやさしいのね
    一番大事で素敵な事です
    プロフィール

    なぎさ

    Author:なぎさ
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